Quantcast
Channel: 初心者タグが付けられた新着記事 - Qiita
Viewing all articles
Browse latest Browse all 21081

[翻訳] Remove Richard Stallman

$
0
0

この記事は Salam G. 氏による Remove Richard Stallman という記事の和訳です。
やや旧聞になりますが、ストールマン氏が MIT を辞職しました。その大きなきっかけとなったのが Salam G. 氏によるこの記事です。私がこの記事を和訳するのは、日本の IT に携わる多くの人に、IT や学問の世界におけるジェンダーの問題について関心を持って欲しいと願うからです。これは工学・自然科学・社会科学・人文学・工学に携わるすべての人々に関係があることだと、私は信じています。

  • 翻訳した部分は本文のみに留め、原文の補遺と編集記録は省いてあります。
  • この記事は児童虐待や性暴力に関する話題を含みますので注意してください。
  • 「ポエム」タグは適当なタグが見当たらなかったので使いました。

以下本文。


腹が立って仕事にならないのでこれを書いている。

私がこれを書いているのは、2019年9月11日水曜日午前11時、MIT Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory (CSAIL) のメーリングリストに投稿されたとあるメールが、友人から転送されてきたからである。

元のメールの差出人はリチャード・ストールマン。著名な計算機科学者である。

元のメールでは、とある女子学生が、この Facebook イベントについて書いたメールへの、ストールマンによる返答がなされていた。そのイベントというのは、ジェフリー・エプスタインの寄付についての抗議に参加するよう、MIT の学生らが呼びかける、というものである。

金曜日のイベントの告知はマーヴィン・ミンスキーに対する不正義である:

「(エピスタインの件の犠牲者のひとりを暴行したかどで糾弾されている)AI の『パイオニア』たる故人マーヴィン・ミンスキー」〔という箇所のことである〕

不正義というのは「暴行」という語のことである。「性的暴行」という言葉は曖昧で、糾弾の拡大を促進するものである。
すなわち、ある人がXをしたと主張して、人々がそれはXよりももっと悪いYであると思うように誘導しているのである。

上で引用した糾弾の文言はその拡大の明らかな例である。参照した文書は、ミンスキーがエプスタインのハーレムのひとりとセックスしたと主張している(https://www.theverge.com/2019/8/9/20798900/marvin-minsky-jeffrey-epstein-sex-trafficking-island-court-records-unsealed を参照のこと)。
これが事実であると仮定しよう(〔事実ではなかったと〕疑うべき理由は私には見当たらないが)。

「暴行」という語は、ミンスキーが力や暴力を用いたということを、何らかの不特定な形で推測させる。だが、あの記事ではそのようなことは述べられていない。
述べられているのは、彼ら〔ミンスキーと被害者のひとり〕がセックスをしたということだけである。

ここから様々なシナリオが考えられうるが、もっともらしいのは、被害者のひとりというのは、ミンスキーに自ら進んで自らを差し出したのだ、というシナリオである。被害者がエプステインに強制されていたと仮定するなら、エプスタインは、彼女が強制されているということをエプステインの多くの仲間たちに対して秘密にしておくべき理由をすべて、彼女に説明してやったはずである。

私〔ストールマン〕は糾弾の拡大の色々な事例を見て、糾弾の文言における「性的暴行」という言葉は絶対に間違っていると考えている。

何を批判しようと思うにしても、批判につきものである道徳的あいまいさを避けるべく、特定的な言葉を使って批判を述べるべきである。

リチャード・ストールマンが述べたことの中には、どこから手をつけたらよいのかわからないほどの誤りが含まれている。まず、ありがちで whiney な「彼は糾弾されているが有罪が確定したわけではない」式の防御術は、ストールマンは使っていない。否、ストールマンはもっと先まで進んでいる。じっさい、ストールマンは「仮に、マーヴィン・ミンスキーが児童の性的人身売買の犠牲者である未成年の女の子とセックスをした、と仮定してみよう」と述べている。

参照した文書は、ミンスキーがエプスタインのハーレムのひとりとセックスしたと主張している……それが事実であると仮定してみよう(〔事実ではなかったと〕疑うべき理由は私には見当たらないが)。

するとストールマンは、性奴隷にされた子供は、どういうわけか「自ら進んで」性奴隷にされたかも知れないと述べるのである。ストールマンが児童性的人身売買グループの犠牲者らを「ハーレム」などというとんでもない語で呼んでいることにも注意されたい。

ここから様々なシナリオが考えられうるが、もっともらしいのは、被害者のひとりというのは、ミンスキーに自ら進んで自らを差し出したのだ、というシナリオである。

これはテクノロジーのコミュニティで広く尊敬を集めている人物なのである。

これは MIT の客員研究者なのである。

MIT は、エプスタインの寄付を受け入れることによって、エプスタインの評価を浮上させるようなことは望んではいなかったと主張している。ところがご覧のように、MIT は評価を浮上させるはおろか、リチャード・ストールマンのような人物に資金を提供し、客員研究員として受け入れているのである。

まだある。どういうわけか、リチャード・ストールマンは、自分の意見を、学部生も参加している学科共通のメーリングリスト ("csail-related") に投稿するのが適切であると判断したのである。続くスレッドではこのようにも述べている:

「どの国におけることか、とか、被害者は18歳だったのか17歳だったのか、とかいうような些細なことにもとづいて『レイプ』を定義するのは道徳的に不条理だと考える」

これは「Giuffre 〔原註:証言した被害者〕は当時17歳で、これはヴァージン諸島ではレイプ〔原註:原文ママ〕にあたる」と述べたとある学生に対する返答である。

もう一度言う。このメーリングリストは学部生も参加している。学部生には「18歳か17歳」がいるはずである。

ショックだった。私は CSAIL の院生である友人と話を続けた。このメールのスレッドの全体を得ようと試みながら(私はこのメーリングリストには参加していなかった)。地方誌、全国誌、ニュースサイト、新聞、ラジオ局の記者たちにメールを送り始めた。考えが止まらなかった。自宅へと運転する45分間、普段ならポッドキャストか音楽を聞いている時間、私は完全な沈黙の中、ただ座っていた。

すぐに返信をくれた唯一の記者は WBUR の記者だったが、WBUR はこの情報をすぐに公表するつもりはなさそうであった。そういうわけで私は、ことのあらましを自分一人で書くかも知れないと、友人たちに知らせた。今日の仕事の後に書いて公表しても良かったのだが、集中できないかも知れなかったので、今やっている。

MIT は女性に値しない1
どのみち、この世界は女性に値しない。どうすれば STEM におけるジェンダーの問題を「修正」することができるか、STEM のプログラムに「もっと女子を増やす」ためにはどうすればいいか、といったことを訊ねてきた人たちのことを思い出した。「特殊なことを考えるのには男のほうが向いている」「テストステロンは数学の能力に結びついている」と誰かが言い出したときのことを思い出した。

こういう人たちが群れをなしているのが、心の中で見える。そして心の中で、私は立ち上がってその人たちに叫ぶ。時間と手がたくさんあったなら、その人たちの肩に手を当てて、その人たち一人一人の感覚を揺さぶることだろう。

問題は明白だ。

女は何も悪くない。STEM の女性は何も悪くない。いろいろな問題があっても、STEM に関係する分野が大好きな女性と女の子はたくさんいる。MIT の学士を4年で、PhD を7年で取得してしまう女性もいる。ところが、そうしたあとで、STEM の分野に携わり続けるべきかどうかを悩み始めるのだ。この分野は、この分野には、ひどい男があまりにも沢山いるからだ。

ジェフリー・エプスタイン。マーヴィン・ミンスキー。

リチャード・ストールマン。

トラヴィス・カラニック2。ジェームズ・ダモア3。テック業界とアカデミアとにおける、こういうパターンのハラスメント、ミソジニー、非犯罪化の長々と続くリスト。
これより前から、リチャード・ストールマンは問題のある人物として知られていた。これはストールマンのオフィスのドアの写真である。

〔リチャード・ストールマン 正義(とホットな女性)の騎士〕

これはそんなに真面目なものではないし、面白発言のたぐいですらあるが、だがストールマンは以前、放火するような (incendiary) メールを CSAIL のメーリングリストを送っていたと聞いている。友人のひとりは、ストールマンのメールを明示的に受信トレイから削除するフィルタを設定しているのだと冗談を言っていた。

私たちはどうしてこれを許容しているのだろう?

私たちはどうして、こういう冗談やコメントを許して、すべては単なる「slide4」だと矮小化してしまうのだろう?
私たちはどうして、こういうことが酷くなって公になって、私のような人が堪らなくなってこういう記事を書かなければならなくなるまで、放っておくのだろう?

私たちはどうして、片や MIT の大学院に入る女性やマイノリティが少ないことについて考え込みつつ、片や酷い男性研究者たちを支えなければならないのだろう?いや、支えているというだけではない――私たちは彼らをキャンパスへ招き入れ、招き入れた当の女性やマイノリティの学生と接触させることになるようにしているのである。

私たちはなぜ、こういう人たちをただ「天才」だからと言って許しておくのだろう?

ミシェル・オバマが言うように「彼らはそんなに賢くない」。STEM の分野に関しても、私は同意しなければならない。

テック業界の男性が女性にはできないことをやっているのを見たことなどない。むしろ、より謙虚でチーム志向な女性だってありうる[^4]。
他人を卑下するようなコメントが slide するのが許されるほどの賞賛に値する人物など一人もいない。特に、そういったコメントがレイプや暴力や児童性的人身売買を擁護するような場合については。

児童、

性的、

人身売買、である。

このことでサンディ・フック5のことを思い出した。知っての通り、当時、もしアメリカが子供たちの死に対して何ら責任を持とうとしなかったなら、私たちはその後も決して何をしようともしなかっただろう。
今、もし著名な技術の研究機関が、左派・右派・中道を問わず、問題のある男性を辞めさせようとしないならば、私たちは何もしない。決して。

たとえハーバード大が今後ともエプスタインへの寄付を受け取り、今後ともエプスタイン問題に対して沈黙を保とうとも、この問題が私たちのコミュニティの中で内輪の恥を晒していることなど、もはやどうでもよい。

私は母校を深く愛している。あそこは私が7歳の頃から目指していた場所だ。もし訊ねられれば、一番幸せな思い出、一番誇れる成果は、2013年12月14日の午後12時14分、合格通知の手紙を受け取った時であると、私は今でも答える。母校、すべてのテックや STEM の分野の研究機関、ひいてはすべての研究機関をよりよいものにしたいという強い思いをもって、私はこの記事を書く。

単にその人が「天才」だと思われているからとか、単にその人たちが力を持っていて、影響力があって、高い地位にある友人がいるからというだけの理由では、このような行為は看過されえない。

そういう人たちは、これほどまでに長い間、ジェフリー・エプスタインがレイプや児童人身売買をするのを許容してきた力なのだ。

少なくともリチャード・ストールマンは誰かをレイプしたというかどで糾弾されているのではない。だがそれは、私たちの最高水準なのだろうか?名門大学が守る水準なのだろうか?もしこれが MIT が守りたい水準なのだとしたら、もしこれが MIT が支持したい水準なのだとしたら、もしそうなら、よろしい、そんなものは焼き捨ててしまえ。

そうでないなら辞めさせよ。リチャード・ストールマンのような男たちや、今は隠れているに違いない他の多くの人たちを辞めさせよ。彼らは決して安んじていられるわけではなく、彼らは、私たちが思っているほどには、彼らの権力と地位の塔にかくまわれているわけではない、ということを #MeToo 運動は教えてくれた。

彼らを辞めさせよう。それが私たちのすべきことなのであれば。そして灰の山から、もっと良いものを建て直そう。


  1. "MIT does not deserve its women." うまい訳が思い浮かばなかった。 

  2. UBER の創業者。 

  3. 「反多様性」メモで Google を解雇。 

  4. うまい訳が思い浮かばない。 

  5. サンディフック小学校銃乱射事件 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 21081

Trending Articles